『SOUL CATCHER(S)』とは
ジャンプ系列で、2013年から2016年にかけて連載された吹奏楽マンガです。最初は本誌で連載していたのですが、ジャンプNEXT→ジャンプ+と移籍を経て完結した作品です。移籍を重ねているにも関わらず、この作品に対するファンは根強く、隠れた名作という声もよく聞くほどです。
そんな隠れた名作と呼ばれるSOUL CATCHER(S)とはどのようなマンガなのか、その魅力についても語っていきたいと思います。
『SOUL CATCHER(S)』のストーリー
人の心が形となって視ることができる高校生「神峰翔太」は、人の心の裏を直視したり救けを求める心に応えられずいた経験から人間不信気味になっていました。
そんな中、サックスの天才演奏者である「刻阪 響」が音楽で人々の心を癒し、心を掴むというシーンを目撃します。人の心を動かすことなどできないと思っていた神峰にとって衝撃的な光景でした。しかし、聞く人すべての心を掴めているわけではなく、心を見る力のない刻阪は音を届けたい人に届けられないという現状に悩んでいました。彼の悩みと向き合う中で、神峰は心を見る力で演奏者の音を導くことができることが分かり、指揮者として吹奏楽部に入部することを決意します。
SOUL CATCHER(S)の魅力
魅力① 心が視えるというぶっとんだ設定
作者である神海 英雄先生は、なかなかぶっ飛んだ設定をする方で前作のサッカーマンガでもその傾向が表れています。SOURL CATCHER(S)では、主人公の神峰が人の心を視ることができる設定というのもまた、ぶっ飛んだ設定です。神峰は入部した吹奏楽部で悩みを抱えた演奏者たちの心と真っすぐ向き合い解きほぐしながら指揮者として認められていく過程が描かれています。
魅力② 独特の表現
このマンガは、状況の描写、キャラの気持ちの描写に独自性が光る点が魅力です。
例えば以下のシーンは、ファンの中でも人気の高い一コマです。
ひょんなことから、神峰は全国クラスの演奏者たちがひしめく場所で指揮をすることになったのですが、指揮者としてひよっこ同然の彼は演奏者を導くなどできるはずもなく、むしろ演奏が終わるまでリズムを刻むだけのメトロノーム同然の存在になりかけてしまいます。しかし彼はそんな存在になることを拒み、体がメトロノームに侵食されながらもそれに抗っている姿が一コマに集約されています。
彼の指揮者になるんだという強い決意を感じさせる重要な場面です。物語の展開だけでなく、絵で伝えることにも長けている点がこの作品の魅力といえます。
魅力③ ライバルの存在
学生でありながら指揮者を目指す神峰ですが、すでに学生指揮者として先を行く伊調 鋭一が現れます。彼は、神峰と同じく特異な能力を持っており、その能力を持って自身の吹奏楽部の演奏者たちを導き、弱小だった部の快進撃の立役者となっておりました。
伊調は、いち早く神峰の才能に気づき強いライバル意識をもって宣戦布告をしてきます。それ以降神峰の前に常に立ちふさがるライバルとして描かれていきます。
伊調というキャラの面白い点は神峰と同じ立場であるというところです。というのも神峰は全国になかなか届かない部で指揮者として部を導こうとしているのですが、伊調もまた弱小部で全国を目指し指揮者として活動しています。両者は下から駆け上がるという同じ土俵で戦っていく過程を見る事ができます。
魅力④ 個性的な主要キャラ達
素人同然の神峰が突然指揮者志望として入部してきたことに、各楽器のパートリーダーたちは不信感を抱いています。そんな彼らの信頼をどのように得ていくのか、彼らとのかかわりで神峰自身どのように変わっていくのかを見ていくのも、この作品の主題です。
部として一つにまとまっていないのですから、物語の進行も部内の出来事を中心に展開していきます。物語の中核を担うキャラ達は一癖も二癖もあるので、彼らと神峰のぶつかり合いは毎回違った面白さを見せてくれます。
魅力⑤ バトルマンガとしての新境地
吹奏楽マンガでありながら、大会中の他校との競争ではまるでバトルマンガかのように描かれます。
心が視えるという神峰の視点から、音楽の表現、観客の心の奪いあいといった描写を絵で伝えてくれます。その表現の仕方がバトルとしてなら独自性があり、作者のセンスが光る展開をみせてくれます。
最後に
いかがだったでしょうか。少しでもSOUL CATCHER(S)の魅力が伝わっていただけたらと思います。完結から時間がたった今でも、隠れた名作として名をあげられる作品です。ハマる人はとことんハマる不思議な魅力を兼ね備えた作品ですので、興味を持った方は是非とも手を取ってみてはいかがでしょうか。
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