日々、政治不信と国民の生活の苦しい声が可視化され、政治に興味を持ち始めた人も増えてきています。
政治に関心を持つのは素晴らしいことですが、一方で以下のような思いもあるのではないでしょうか。
政治に対する不満や関心の声は上がっていますが、一方で投票率はさほど向上していないのも現状です。
「どこに投票すればいいのか分からない」「どこに投票しても一緒なのではないか」。
そんな気持ちから投票への行動が遠くなっているのも一因でしょう。
そこで、本記事では、「投票先を決める方法」と「投票がいかに重要であるか」を解説し
投票に行こうと思う人が1人でも増えたらいいなという思いで本稿を展開していきます。
この記事では、以下のような内容を取り扱っていきます。
- 投票先を決める思考法
- 投票の重要性
なぜ「選べない」のか
「投票先がない」「どこも信用できないから消去法で自民党」という声をよく聞きます。
たしかにどの政党も完璧ではないかもしれませんし、デメリットを見たら支持するのも躊躇してしまう気持ちも分かります。
しかし、民主主義とは「メリットとデメリットのバランスを見て、許容可能な選択肢を自分で決める」ことが前提にあります。
そのプロセスを放棄し、デメリットばかりを見て「投票先がない」と突き放すと、何も選ぶことができなくなってしまいます。
自ら選択肢を狭め、やがては「選べない」と選択を放棄するのは、建設的な考えとは言えないと私は思います。
民主主義における「完璧な選択肢」は存在しない
完璧な選択肢がない=選べないというわけではありません。
常に完璧な選択肢が用意されていることなどなく、どんな利益を求め、どんなリスクを受け入れるかを選択することが求められます。
あなたは、どこに線を引き、何を選びますか?
私たちは、改めて自身に問う必要があります。
「消去法で○○党」という思考の危険性
「他に選択肢がない」「野党は頼りないから自民でいい」「消去法で自民党」。
そんな声も少なくなく散見されます。
勘違いしてほしくないのですが、別に自民党批判をしたいわけではありません。
現政権が自民党であるために言っているだけで、「消去法で○○党」の○○には現政権ならどの党でも当てはまります。
ここで投げかけたいのは、「何も持って現状維持が良いのか」を考えたうえで、選んだのかということです。
今の苦しい現状を生んだのは、自民党であるという事実。
しかし同時に、その自民党を選び続けてきたのも、他ならぬ私たち国民自身です。
以下、現政権下で繰り返されてきた具体的な政策実績の一部を見てみましょう。
これらの問題が繰り返されてきたという事実は、
最悪を避けるという姿勢が全て悪いわけではありません。
しかし、「本当は不満だらけ」でも「現状を維持する」。
このような選択が繰り返されれば、
今一度、民主主義における「選ぶ」という行為の意味、現状維持し続ける意味、
そしてそれがもたらす結果責任について、私たち一人ひとりが真剣に問い直す必要があるのではないでしょうか。
本当に選ぶべきは「許容できるデメリット」
民主主義とは、「理想の選択肢を探す」のではなく、
ことです。
投票とは「自分の選択で未来に責任を持つ覚悟」。
もっと直接的な言い方をするなら
選挙とは、単に「支持/不支持」ではなく、未来に対する合意と負担を引き受ける行為です。
政治無関心の危険性
政治無関心が続き、低い投票率が続くとどうなるか、改めて整理していきましょう。
まず前提として、低い投票率は政治家にとって「現状維持」が最もリスクの低い選択肢として選ばせてしまうということです。
投票率が低ければ、組織票を持つ既存勢力に有利に立ち回れます。
そして、政治に関心を持たない層が大半であるほど、政治家は「本当に必要な改革」よりも「目先の支持を得るバラマキや迎合的施策」を優先し
結果的に、「将来のための痛みを伴う決断」は先送りされ、問題が深刻化してから初めて表面化する。
有権者の当事者意識の欠如は、政治家に「痛みを伴う改革」や「長期的視野の政策」を採用する意識を奪います。
そんな構造的問題が発生する可能性があります。
たとえば、2014年の衆議院選挙は戦後最低の52.66%という低投票率を記録しました。
その結果、選挙を通じた政治的な方向転換はほとんど起きず、
さらに直近の問題に触れるなら、
実質可処分所得の低下と物価上昇のギャップ拡大については、
1997年をピークに可処分所得は減少傾向が続き、最新の調査でも
2022 年に実質賃金 -1.8 %、2023 年は -2.5 %、2024 年も -0.2 % と3年連続でマイナス。
一方、消費者物価指数 は 22 年 +2.5 %、23 年 +3.2 %、24 年 +2.7 % と高止まりが続き、生活コストは実質賃金を上回るペースで上昇しています。
投票率が低いと「現状維持」が最もリスクの低い選択肢として政治に定着し
誰からも反発を受けず、誰からも期待されない政治が、静かに我々の首を絞めていきます。
「現状を変えない」という選択が積み重なった結果、私たちの生活も将来展望も徐々に痩せ細ってきた側面があり
今なお現状維持を良しとする投票行動をとることは、これまでの延長線上にある“緩やかな衰退”という未来に自ら同意することと近い意味を持つのではないでしょうか。
投票率や政治関心の高さは、政策の「変化への可能性」と強く連動しています。
有権者の意思が弱まれば、
として現れています。
勘違いしてほしくないのは、政治への関心が強い中での現状維持は問題ないということです。
ここで言いたいのは、そうした無関心ゆえの消極的な現状維持からの脱却のために、まずは投票に行くことがどれだけ大事なのかということです。
総括:民主主義における最も貧しい意思表示とは?
「選べない」「全部ダメ」「だから○○党でいいや」という
無関心やあきらめが広まることは、民主主義にとって最も深刻な状態です。
不完全な選択肢から、どれだけ真剣に考えて、どれを選び、何を捨てるか。
取捨選択するのか積極的な現状維持をするのか。
その判断こそが民主主義の核心であり、私たちが有権者として果たしたい責任でもあります。
投票先を決める方法
投票先を決めるにあたり、以下の3つを順序だてて思考すると決まると思います。
何を一番重視するか?(例:福祉、教育、防衛、雇用など)
有権者が「すべて満たすことはできない」という前提を理解したうえで
何を最優先に考えるかを定めることは制度設計にとって不可欠な行為です。
政策の対立軸や政党の公約の違いを理解するフェーズ。
どんなリスクなら許容できるか?(例:税負担、外交不安、財政赤字)
政策実現にあたり、どんな政治的不満(例:増税反対/防衛強化/脱原発)が発生しうるかを考え
それは許容できるものかを判断する必要があります。
道中で述べた「政策はメリットとデメリットのトレードオフ」であるという思考が必要です。
実現するにあたり、「別のリスクとの引き換え」が伴うため、選択の責任を認識するフェーズ。
その価値を実現できる現実的な主体はどこか?
最も自分の価値観に近い政党を探し、掲げる公約の実現性と合わせて支持/不支持を検討するフェーズ。
歴史の警鐘に耳を傾ける
最後に、先人たちの思想を要旨として紹介し、本稿の締めくくりとさせていただきます。
「民主主義の最大の脅威は、専制ではなく、自由の中で思考をやめた大衆である」(要旨)
——アレクシ・ド・トクヴィル『アメリカの民主政治』より
「思考しない者が、全体主義の温床になる」(要旨)
——ハンナ・アーレント『全体主義の起源』より
「自らの声を上げようとしない者は、自らの自由を売り渡している」(要旨)
——ジョン・スチュアート・ミル『自由論』より
参考文献
経済・社会保障関連
・社会保障費
財務省「令和6年度(2024年度)一般会計予算」
https://www.mof.go.jp/budget/budger_workflow/budget/fy2024/index.html・国民負担率
財務省「国民負担率の推移」
https://www.mof.go.jp/tax_policy/summary/condition/a04.htm・名目GDPの国際比較(1995〜2024)
IMF「World Economic Outlook Database」(2024年4月版)
https://www.imf.org/en/Publications/WEO
投票率・政治参加意識関連
・選挙の投票率
総務省「国政選挙の投票率」「年代別投票率」
https://www.soumu.go.jp/senkyo/senkyo_s/data/index.html・政治関心に関する意識調査
各年における「国民生活に関する世論調査」
https://survey.gov-online.go.jp/search/research_search/?_category=312&_filter=survey
所得・物価・教育・出生率関連
・実質賃金の推移
厚生労働省「毎月勤労統計調査」
https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/30-1a.html・物価上昇(CPI)
総務省「消費者物価指数」
https://www.stat.go.jp/data/cpi/・教育支出(対GDP比)
OECD「Education at a Glance」
https://gpseducation.oecd.org/・出生率
厚生労働省「人口動態統計」
https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/81-1a.html
政治制度・国際評価関連
政治腐敗認識指数(CPI)
Transparency International「Corruption Perceptions Index 2024」
https://www.transparency.org/en/cpi/2024
哲学的引用の出典(要旨ベース)
アレクシ・ド・トクヴィル『アメリカの民主政治』
ハンナ・アーレント『全体主義の起源』『エルサレムのアイヒマン』
ジョン・スチュアート・ミル『自由論』
※いずれも直訳ではなく思想の要旨です。
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